• 会員紹介 / 正会員 – 今野 等

今野 等    KONNO, Hitoshi

正会員
左官/宮城県富谷市

左官の仕事をしていると、偶然が重なるなど運命的な出会いがある。

現場からすごくいい土が出たと連絡がありなんとか入手し、施主の方々、設計士の方に、この土でいろいろ提案して工事を進めていくうちに、土に拘る人が増えていき、大きな渦になって仕上がっていく。

これが自分と仕事の縁である。

そして、東日本大震災をきっかけに宮城に移住してきた建築家や大工さんなどとの繋がりも多くなり、家づくりや町づくりをしている。


1967年、宮城県石巻市生まれ。高校卒業後、左官である父のもとで仕事を始めた。住宅や公共施設及び店舗、蔵など、宮城を中心に仕事をしている。
2011年、震災の年に今野左官店として独立。自分も含め、震災で土地を失い点々と散って住む人たちの家の物語を残すべく、以前住んでいた土地の土を使って新しい家の壁を塗ることを提案。いまもそのつながりは続いている。
震災で多くの建造物が壊れ、解体されていった様を見て、古くからある文化財を残せるよう日々創作に励む。
新築の家にも土壁や漆喰を提案し、左官の良さや古くからある壁の良さを知ってもらえるよう努力している。できるだけ地元の土と材料を使い、東北宮城の左官を発信していく。

施工実績
2014年 仙台市 土蔵移築工事
2016年 石巻市 モリウミアス 露天風呂(設計:遠野未来建築事務所)
2017年 福島県 土蔵改修工事
2019年 女川町 竹浦マリンビレッジ(設計:遠野未来建築事務所)

今野左官店
宮城県富谷市東向陽台1-16-12
Tel&Fax 022-374-2117

「富谷宿観光交流センター」で再建中の土蔵の出隅、水切りの下地。奥州街道の宿場町の旧内ケ崎醤油屋跡地に、富谷市が同センターを計画。主屋ほか、7棟ほどの新旧建物で構成されている。
ナマコ壁の出隅と水切り部分の仕上げ。ナマコ壁の瓦は旧土蔵から再利用した。下地は指定されたモルタルだが、本来のつくり方を大切にし、中塗りに砂漆喰、仕上げに漆喰を用いた。ハチマキと扉の再利用も提案。2021年10月オープン予定。
左が仙台市内に施工中の陶芸ギャラリー。設計施工を託された大工さんが近くの山で伐ったスギ材を使い、外壁は焼スギ張りに。その外側に版築の壁を設けた。宮城県産の土を調達、技法を伝授して大工さんが突き固めた。
陶芸ギャラリーは、この土地に立つ古い板蔵を残す意図から計画された。板蔵を囲い込みつつ、新たな空間を加えて設計されている。小舞下地で荒壁から仕上げまで土を用いる本格的な土壁とし、ざっくりとした表情に。2020年竣工
今野左官店のショールームの一角。オリジナルの土壁仕上げや三和土を施し、施主に体感してもらっている。さまざまな表情がつくれることが施主に理解され、気に入ったものが住宅などに採用されるケースも多い。
宮城県南三陸町の復興住宅M邸。施主は震災で家を失った。地元の木と土でつくってほしいと要望され、後ろの山で大工さんがスギを伐り、今野さんが土を採取した。下地は木舞を掻き、荒壁から仕上げまで土を使った。2019年竣工。
M邸の居室の黒い土壁。ヨシを束ねて横に打ち、塗り付けた土の水が引き、収縮することでラインが浮き上がる。施主がショールームに並んだこの表情を見て気に入り、採用された。
M邸のリビング。薪ストーブコーナーの黒い三和土は、やはりショールームに施されていたことから、施主が望んだ。居室の淡色の土壁仕上げは施主の好みに合わせ、白土と黄土を調合したもの。
30代の施主家族の住まい。室内の仕上げは漆喰とし、床の間のみをショールームと同じデザインの土壁で仕上げた。モチーフは伊達政宗の陣羽織として伝わる「紫地羅背板五色乱星」。カラフルな円は星を表している。
2018年、石巻市雄勝町で道路工事中に紅色の赤土が見つかった。当時、近くで計画中だったT邸の施主と設計者から、ぜひ使ってほしいと言われ、工事関係者の協力で掘り出された。赤土の多い三陸でもめったに出ない色。
T邸の土塀施工中。施主は被災後も雄勝町に住み続けたいと地元で新築。すべて土壁で外部は漆喰仕上げ。内部の玄関、和室などに紅色の地元産の土(前画像)を塗った。土塀にもこの土を用いた。
完成したT邸の土塀。屋根材は雄勝で古くから産出する雄勝石の天然スレート。土の自然の紅色と、天然スレートの質感が調和し、美しい。スレートは家屋の屋根、煙突、妻壁にも使われている。2019年竣工。