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小林 隆男
KOBAYASHI, Takao

正会員 / 前副議長
左官 / 滋賀県守山市

写真/矢野津々美
協力/コンフォルト(建築資料研究社)203号

なぜ、壁を塗っているか? それは壁の向こうにある宇宙を見るため。想像するため。
そこは真っ暗。だけど見通しは効く。見通しは効くけど、真っ暗やねん。
出来れば果てまで行きたい。そやし塗ってまんねん。

日本の土は弱い。でもそこがいいんや。なぜ土は弱いからいいのか? 土はそのままで美しいけれど、風化していくたびにもっと美しくなるからや。弱くないと風化せいへんねん。美しくなるには、弱くないとあかんねん。それが日本人のもののあはれを感じる感性につながってると思うんや。

「なにごとの おはしますかは 知らねども かたじけなさに 涙こぼるる」っていう、西行の歌があるやろ。そういう壁が理想やな。そんな壁が塗りたいなあ、って思うとる。
そして、次の世代に伝えるべき壁を伝えたい。

1961年滋賀県守山市生まれ。18歳から親元の小林左官店で修業、二代目を継ぐ。地元のほか、全国各地で活動。2008年の能登半島地震で被害を受けた蔦屋漆器店の土蔵修復、秋田県増田町の土蔵の黒漆喰磨き修復など、伝統的な建造物の左官も多く手がける。12年にはアメリカ・アリゾナのカネロプロジェクトで、左官技術の講師をつとめた。12~22年、一般社団法人日本左官会議副議長。代表的な仕事に、石川県七尾の日本料理店「一本杉川嶋」、大阪の「花園邸」、広島の「小清水邸」などがある。屋号は「江州左官 土舟(ごうしゅうさかん どしゅう)」。

小林左官店 / 江州左官 土舟
滋賀県守山市金森町911
Tel. 090-8880-8783

国の名勝に指定されている齋藤氏庭園(宮城県石巻市)内の土蔵。度重なる地震により破損してしまったため、根本から修理、壁は小舞掻きからやり直して復元した。写真は入り口脇の袖壁。木瓜型の内側は黒漆喰磨き。
同じく齋藤氏庭園。こちらは白漆喰磨き。
多くの家が見事な黒漆喰磨きの土蔵を引き継いでいることで知られる、秋田県増田町。ほとんどは鞘と呼ばれる建物の中にあるが、この土蔵は外に面している。中塗りまでめくった後、黒漆喰磨きで仕上げているところ。
秋田県増田町、住宅の袖壁の復元。100年以上前のものと思われるが、もともと稲荷山土の大津壁だった。京都から運んできたのかもしれない。
2007年の能登半島地震で被害を受けた蔦屋漆器店の土蔵の修復。小舞掻きや荒壁付けはボランティアの協力で行われ、その記憶を残すために下地窓をつくった。仕上げは大津壁。
石川県七尾市の日本料理店「一本杉川嶋」の土壁切り返し仕上げ。登録文化財の建物内にあったが、2024年1月1日に起こった能登半島地震により被災してしまった。
秋田で比内グリーンという十和田石の粉に出会い、その美しい緑色を生かした壁を塗ろうと、調合や塗り方を工夫。漆喰と混ぜて、少し粗めの肌にする工法とした。ここは住宅のキッチンよりの壁で、磨きで仕上げている(比内大津と命名)。
那須にある「森林ノ牧場」のストローベールの小屋。日本の気候に合うよう、軒の出を深くし、土蔵の手法を取り入れるなどして、スタッフたちと一緒に施工した。
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