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宮奥 淳司
MIYAOKU, Junji

正会員
左官 / 奈良県宇陀市
文化財に重きを置いて仕事をしています。
僕が生まれ育ち住んでいる奈良の宇陀は、古事記に名が出てくる歴史ある土地で古い街並みが残っている地域です。そんな街で左官を営んでいた父親に古くからの左官仕事を教わりました。僕の直接の親方は父親ですが、もう一つ大きな師匠的存在として古い建物に残された名もなき職方の技があります。

修復の仕事は昔の職人さんの残した手技をなぞる仕事です。ですが、目の前に答えがあるのになかなか手が届かない。現代と違って道具に頼る部分が少なかった分、さまざまな工夫と努力で技術を極めたのでしょう。そんな仕事に追いつけ追い越せとお手本にするよう日々心がけています。

これまでで最も大きな仕事は薬師寺国宝東塔の大修理事業です。
約1400年前白鵬時代に創建された唯一現存する建物で、長い歴史の間に何度も部分的に修理されてきましたが、長年のダメージは隠せず2009年から延べ12年の時間をかけ史上初の全解体修理が行われたのです。

僕らが関わったのは仕上げの段階の後半3年ほどで、左官工事は1年半ほど続きました。1000年以上前の古建築の壁下地は、木木舞で荒土壁〜土中塗り〜漆喰仕上げと国の黎明期より受け継がれてきた左官の原点とも言える「素朴な壁」が奈良には多く残っています。左官統領として各地の仲間の応援をいただき、無事やり遂げられた事は、一生のうちでも二度と巡り会えない貴重な経験となりました。

私達のアイデンティティともいえる木造建築、環境負荷の少ない土壁がもっと見直される事を願っています。

宮奥左官工業代表。古の都「寧楽」=奈良の、古事記に名を残す歴史ある土地、宇陀に生まれる。重要伝統的建造物群保存地区「宇陀松山」で、父親の営む宮奥左官工業の二代目として修業、伝統的左官技術を得る。古建築の多く残る土地柄ゆえ、古式の仕事に惹かれ奈良の文化財保存修理事業に向き合う。国宝当麻寺西塔壁工事、薬師寺国宝東塔大修理事業では左官頭領を勤める。奈良県文化財保存事務所人材育成課に置いて左官主任講師として技術承継にも関わる。古式竈築造を得意とする。

宮奥左官工業
奈良県宇陀市大宇陀黒木1028
Tel. 0745-83-2241
宮奥左官工業

薬師寺国宝東塔。白鳳時代から現存する唯一の塔婆建造物で、唯一無二の美しさを誇る。
2023年4月に営まれた薬師寺東塔の落慶法要には、工事に参加してくれた左官仲間が 集合。左から3番目が藤田秀紀さん、その右が宮奥、一番右が白石博一さん。
日本最大級の重伝建地区、今井町の大型古⺠家 N 様邸の土蔵の観音塗扉を修復。鏡の木瓜型に紺色の「化粧和紙」で山形の意匠をぐるりと施し、より一層豪華に。
京都嵐山のY様邸で、江戸時代中期より現存する古式の荒神付き七ツ口竈の大規模修理を施す。島ヶ原白土の二分壁押さえ仕上げで、独特の梨肌が特徴。
幻の銘酒「而今」で知られる、三重県名張市の老舗酒蔵「木屋正酒造」の荒神付き三口竈+囲炉裏。荒神竈は島ヶ原白土押さえ仕上げ、常用竈と囲炉裏は島ヶ原黒土の磨き仕上げ。
京都宇治「中村藤吉本店」三口竈、黒二分壁の磨き仕上げ。二分壁とは土に2割石灰を混ぜた仕上げのことで、京都などでは大津と呼ぶ。
古き良き町を散策できる「ならまち」の複合施設「鹿の舟」の食堂、その名も「竈」の三口竈。古式日本竈の意匠と西洋竈の構造で、島ヶ原黒土の磨き仕上げ。実際に竈炊きご飯が味わえる。
渡辺真さん(左)に応援に来ていただいた山梨での竈づくりの現場。初めて訪れる土地での仕事だったが、何から何まで心強いサポートをいただいて無事竣工。 島ヶ原黒土の磨き仕上げ。
古代の女王卑弥呼の墓とされる「箸墓古墳」の近くにある「ひみこの庭」のCAFEに 設営した三口竈。古式日本竈の意匠で、島ヶ原黄土の磨き仕上げ。
春日大社権宮司を勤められたO様邸。家神・竈神が宿る竈として荒神竈をしつらえた。黒二分壁の磨き仕上げ。
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