• 会員紹介 / 正会員 – 横山 和弘

横山 和弘    YOKOYAMA, Kazuhiro

正会員
左官/埼玉県八潮市

私が幼稚園児だった頃、塗り絵の時間があった。まわりの園児たちが輪郭線からはみ出して色塗りをしていた。私は彼らがどうしてはみ出してしまうのか理解できなかった。私は少しもはみ出さずに色を塗っていた。その頃から職人だったようだ。

私の仕事は「お題」をもらってするものである。施主・設計士・建築家・デザイナーたちの「オモイ」を「カタチ」にすることが私に与えられた使命である。それを実現するためにはそのオモイを彼らと共有することが大事であると考えます。

左官職人は表現者である。左官職人が塗った「モノ」にはその「人となり」が見えます。


1957年東京生まれ。新潟をルーツとする祖父の代から左官を営む。左官・久住章にあこがれて「花咲か団」に参加。94年、越後屋左官店を設立。
住宅などの日常的な左官仕事はもちろん、丁場の規模の左官仕事であっても繊細に仕上げるセンスと、確かな技術をもっている。清新な土壁や漆喰壁、磨き壁、美しい研ぎ出しを生み出す腕に、施主や建築家など、クライアントは厚い信頼を寄せる。
依頼を受けると精度の高い仕事で応え、筋を通す職人の矜持をもちながら、未知のジャンルに飛び込む柔軟さも。近年、海外系アミューズメントパークの左官造形の依頼に、非日常の世界をつくる楽しさを見出し、引き受けたのもその一つ。左官の力で幅広い世界に挑む。

[ おもな仕事 ]
1997年聖イグナチオ教会ザビエル聖堂(東京・四谷) 内壁・天井の掻き落とし(設計:坂倉建築研究所)
2001年三鷹の森ジブリ美術館(東京・三鷹) 内・外壁の色モルタル掻き落とし、漆喰仕上げなど
2008年古美術・祥雲(東京・銀座) 内壁の聚楽壁など(設計:木村優/アートステーション)
2010年日本料理・虎白(東京・神楽坂) 内壁の聚楽壁仕上げ、外壁の掻き落としほか(設計:アーキヴィジョン広谷スタジオ)
2015年ISETAN SALONE(東京・六本木ミッドタウン) 380㎡の床を現場テラゾー(設計:新素材研究所)
2017年MOA美術館(静岡県・熱海) 黒漆喰壁(設計:新素材研究所)/Lounge Six(東京・銀座) 外部黒漆喰、カウンターの聚楽壁(設計:新素材研究所)/Aesop GINZA SIX店(東京・銀座) 内部仕上げ、床の現場テラゾー(設計:トラフ建築設計事務所)
2018年鮨店「きよ田 離れ」(東京・銀座) 土佐漆喰研ぎ出しの壁(設計:新素材研究所)
2020年白井屋ホテル特別個室「真茶亭」(群馬県・前橋)の切返し土壁(設計:新素材研究所)

越後屋左官店
埼玉県八潮市木曽根692-8
Tel&Fax. 048-996-9704

鮨店「きよ田 離れ」。カウンター席正面の壁を「土佐漆喰研ぎ出し」で仕上げた。土佐漆喰を塗り付けて固く乾燥させ、サンダーを掛けた。つややかでやわらかな色合いと、土佐漆喰に含まれている細かいわらすさの表情を引き出している。
© Hiroshi Sugimoto / Sugimoto Studio
Courtesy of New Material Research Laboratory
白井屋ホテルの中につくられた特別個室「真茶亭」。手前のカウンターの正面を抹茶の色の土壁で仕上げた。薄緑色の浅葱土を用い、黄色と青の顔料を調合。切り返し仕上げで肌理細かい表情とした。
© Hiroshi Sugimoto / Sugimoto Studio
Courtesy of New Material Research Laboratory
「MOA美術館」で展示ケースのガラス面への映り込みをなくすために黒漆喰の壁(写真右手)が計画され、親方となり10人ほどで仕上げた。高さ4m、長さは合計68mに及ぶ。仕上げ直したいと思ったが、図らずも生まれた表情を建築家が気に入ってしまった。
© Hiroshi Sugimoto / Sugimoto Studio
Courtesy of New Material Research Laboratory
地元の新築木造住宅「K邸」の外壁をリシン掻き落としで仕上げた。下地はラス板、防水紙の上にラス網を張り、セメントモルタルを下塗り。ガラス繊維のネットを伏せ込んである。写真はグレーの下地の上にリシンを塗り進めているところ。(設計:けやき建築設計)
K邸の外壁の施工途中。リシンを塗り付けたあと、生乾きの状態になるのを見計らって、剣山と呼ぶ左官工具で表面を掻き落としていく。
掻き落とした壁面。材料には骨材として天然の川砂を混ぜている。川砂は粒度が不揃いなので、掻き落としたときに面白い表情ができる。「粒の揃った砕石を使うと、均一な感じになっちゃうから」と横山さん。
K邸の外回りの階段に施した洗い出し仕上げ。川砂を使ったセメントモルタルに、ランダムに割った陶器の破片を埋め込んで、洗い出した。なりゆきの形状の破片も、左官のセンスで、うまくかたちづくる。
日本料理店「虎白」の内外を左官で仕上げたとき、化粧室の洗面カウンターの造形を任され、材料の白セメントに、種石として寒水石の砕石を混ぜ込み、研ぎ出して仕上げた。曲面も自由につくれる研ぎ出しは得意とするところ。