• 会員紹介 / 正会員 – 長田 幸司

長田 幸司    OSADA, Koji

正会員・議長
左官/神奈川

日々の仕事に感謝

心身(しんじん)という禅語があります。 
身体を整えれば心も自ずと整う、良い環境で身体を動かし汗を流せば心持ちも穏やかになる、などと解釈します。

感性や手仕事を生業とする左官にとって、心と身体のバランスは大事なものだと考えます。
ひたむきに材料を作り、無心で壁を塗れば、雑念が失せたまっすぐな仕事ができると信じます。

依頼主の期待に応えるべく、心と身体を張って仕事を残す。
期待以上の結果、共感を得たときはなによりの喜びです。

日々気持ちの良い汗を流せることに感謝します。


神奈川県の西端、湯河原町。穏やかな海と山に囲まれた閑静な温泉町で、祖父の代より続く左官。岸左官工業所(京都市)にて修行後、2001年に親方である父のもとへ。湯河原近郊で町場の仕事をしていた父より家業を受け継ぎ、2006年より(株)長田左官工業代表。住宅など木造建築の仕事を主とし、神奈川県内を中心に活動。 素材の魅力を生かした材料作りと着実な仕事を残すことを目標に日々精進。

長田左官工業
神奈川県足柄下郡湯河原町土肥2-4-15

[ 葉山の家Ⅱ ]
新築住宅。建築家・堀部安嗣さんとの最初の仕事である。壁は白土の切り返し仕上げ。切り返しは、目を細かくしすぎないので、ほどよい素材感が出る。天井は白土の糊土仕上げ。水まわりなどは漆喰、外壁は山砂の掻き落とし、ポーチは山砂の洗い出しで仕上げている。
[ 鎌倉の家 ]
堀部安嗣さん設計の新築住宅。リビング天井は漆喰、壁は白土の切り返し。このほか、お茶室の壁と床は淡路中塗り土を切り返しで、玄関・寝室・階段室の壁は漆喰で仕上げた。玄関、ポーチは山砂の洗い出しとした。写真提供/堀部安嗣建築設計事務所
[ H邸 ]
日高保さん(きらくなたてものや主宰)設計の新築住宅。中奥の棚の枠部分は寒水を入れた黒色の研ぎ出し、天井・壁は漆喰。このほか、玄関やポーチの床は大磯の洗い出しとした。日高さんはいつも職人の仕事のしやすい環境をつくってくれる。
日高保さんは、かならずお施主さん家族や知人を巻き込んで、ワークショップを行う。木舞(こまい)は日高さんも含めみんなで掻き、荒壁も1日ワークショップをやって、あとは長田左官工業が仕上げた。目立たないところに子どもの手形を残している。
[ 結の蔵 ]
秋田県湯沢市から鎌倉に移築された蔵を、3戸に分けて集合住宅とした。設計したO設計室、大沢匠さんの事務所も入居している。蔵の解体時に落とした荒壁土は持ってきて、新たな土を混ぜて塗った。外部は、古い土を荒壁に使って、漆喰を塗った。内部は中塗り仕上げとした。木舞は新しく掻き、戸前と呼ばれる扉部分は柱ごと移築して収めた。地域のランドマークであり、人力車がお客さんへの説明ポイントとしている。
[ 葉山の住宅 ]
私も参加したマテリアルコネクションでのトークを聞きに来ていたお施主さんと奥さんが、湯河原の弊社にサンプルを見に来られ、ウルトラマリンブルー(顔料)の石灰磨きが気に入り、2階の棚に塗った。3階建てで1階は貸店舗。ほかに、スタジオ(2階)には、ティファニーブルーの色漆喰を塗っている。
[ 滝頭八幡神社鳥居 ]
関東大震災を乗り切ったと言われる横浜の神社の鳥居で、元は洗い出しだったが、古くて割れたり落ちたりした部分があった。直せる人を探していたと総代から連絡をもらう。下地の芯のコンクリートは残して洗い出しの層とモルタルの層を取り、塗り直した。寒水と黒霞を混ぜた「御影(みかげ)」の洗い出しとした。以前にもあった「奉献」の字が凹んでいて輪郭がはっきりしないので、盛り上げた。
[ 報徳二宮神社の手水舎 ]
小田原市の神社の手水舎の塗り替え。元は洗い出しで下地はコンクリートだった。いたんでいたので、寒水と黒霞、赤っぽい砂利(チェリーサンド)を入れて洗い出しにした。既存の物に近づけて、復元している。
[ 湯河原吉浜海岸の初日の出(2022年)]
この10年家族と毎年行く。小田原から地元湯河原に行く途中の根府川の海は、出張や都内での仕事の帰りに見ると、「やっぱり、いいところだなぁ」と安堵感に包まれる。若いときにはあまり認識していなかったように思う。季節によっては月が水平線に近いところにあり、幻想的に見える。